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パートタイマー・契約社員から「正社員転換推進措置」の実務ポイント

執筆者の写真: rainbowwave48
rainbowwave48
4 分前
読了時間: 8分

パートタイマー、アルバイト、契約社員など、いわゆる非正規雇用で働く人の割合は、雇用者全体の35%を超える水準が続いています。

こうした人材を活用している企業にとっては、同一労働同一賃金をはじめとするパートタイム・有期雇用労働法への対応が、大きな課題になっています。


その中で見落とされやすいのが、同法が定める「通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置」です。

待遇差の説明や均衡待遇に比べると話題になる機会は多くありませんが、これも事業主に課された措置義務の一つです。今回は、制度の概要と運用上の注意点を整理します。


1. そもそも「非正規雇用労働者」とは


パートタイム・有期雇用労働法が対象とするのは、次の労働者です。


・ 短時間労働者……同じ事業主に雇用される通常の労働者(正社員)と比べて、

1週間の所定労働時間が短い労働者


・ 有期雇用労働者……期間の定めのある労働契約(有期契約)を結んでいる労働者


ここで注意したいのは、社内での呼称は判断の決め手にならないという点です。「パート」「アルバイト」「契約社員」「嘱託」「準社員」など呼び方はさまざまですが、実態として上記に当てはまれば同法の適用対象と考えられます。

フルタイムで働いていても、1年ごとの有期契約であれば有期雇用労働者に該当します。


自社の雇用区分を洗い出し、どの区分が同法の対象になるのかを確認するところから始めると、その後の整理が進めやすくなります。


2. 正社員転換推進措置とは


労働者と企業が結ぶ雇用契約の内容は、原則として当事者に委ねられています。ただし、非正規雇用労働者を雇用する場合、企業には正社員への転換を推進する措置を講じることが求められており、その内容は次のいずれかとされています(パートタイム・有期雇用労働法第13条)。


№

措置の内容

実務上のイメージ

①

正社員募集内容の周知

正社員を募集する際に、業務内容・賃金・労働時間などの募集条件を、既に雇用しているパートタイマーや契約社員へ知らせる

②

社内公募への応募機会の付与

正社員のポストを社内公募する場合に、非正規雇用で働く人にも応募する機会を用意する

③

正社員転換試験制度の整備

一定の要件を満たす人を対象に、正社員へ転換するための試験・選考の仕組みを設ける

④

その他の転換推進措置

転換制度の周知、キャリア面談、正社員登用を見据えた研修の実施など


条文上は「いずれかの措置」とされているため、4つすべてを実施することまでは求められていません。もっとも、①の周知と③の転換試験制度のように組み合わせて運用すると、制度としての実効性が高まりやすいと考えられます。



3. 措置ごとに押さえておきたい実務ポイント


■ ① 募集内容の周知は「届く方法」で


正社員を募集する際、求人サイトへの掲載や職業紹介機関への依頼で完結してしまうと、社内で働く非正規雇用労働者に情報が届かないことがあります。

事業所内での掲示、書面の交付、社内メールやチャット、給与明細への同封など、勤務日数や勤務時間帯が限られる人にも情報が行き渡る方法を選んでおきたいところです。


■ ② 社内公募は対象者の範囲を明確に


社内公募を行う際に、応募要件を「正社員」に限定していないかを確認します。公募要領の対象者欄に非正規雇用労働者を含める形で明記しておくと、運用のばらつきを防ぎやすくなります。


■ ③ 転換試験制度は基準の明文化がポイント


受験資格、選考方法(書類・面接・筆記・実技など)、実施時期、転換後の労働条件までを就業規則や正社員転換規程に定めておくことが望まれます。基準が明文化されていない場合、運用が上司の裁量に左右され、公平性への疑問が生じかねません。


■ ④ その他の措置は「推進」の実質があるか


制度の周知、キャリア面談の実施、正社員登用を見据えた研修の提供なども措置として考えられます。ただし、制度が形式的に存在するにとどまり、運用の実態が伴わない場合には、転換を推進する措置を講じたと評価されないこともあり得ます。



4. 制度運用時の留意点


■ 転換要件の設定は「実態に応じた範囲」で


いずれの措置を選択するかは企業の判断に委ねられています。また、正社員への転換にあたり、勤続年数や人事評価などの一定の要件を課すことも可能とされています。ただし、企業の実態に照らして必要以上に厳しい要件を課している場合には、正社員への転換を推進する措置を講じたとは判断されないこともあります。


例:転換の要件を「勤続10年以上かつ所属長の推薦」とし、実際に該当者がほとんど生じない設計になっている、といったケースは、要件の妥当性を改めて検討する余地があると考えられます。



■ 求められているのは「機会の提供」


ここで求められているのは、正社員への転換を推進する措置を講じることであって、非正規雇用労働者を正社員に転換することまでを求めるものではありません。転換の希望がない人に転換を促す必要もありません。制度と機会を用意したうえで、選択は本人に委ねられるという整理になります。



■ 雇入れ時の説明も忘れずに


同法第14条では、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに、講じることとしている措置の内容を説明することが事業主に求められています。転換推進措置もこの説明事項に含まれます。雇入れ時の説明資料に、自社が採用している措置の内容を1項目加えておくと、運用が安定しやすくなります。



■ 行政の指導・勧告の対象になり得る


転換推進措置は同法上の措置義務であり、対応が不十分な場合には、報告の求めや助言・指導・勧告の対象となることが想定されます。罰則を伴う規定ではないものの、労働局の是正指導を受ければ相応の対応負担が生じます。



5. 混同されやすい「無期転換ルール」との違い


実務の現場では、正社員転換推進措置と無期転換ルールが同じものとして語られる場面があります。両者は根拠も内容も異なります。


・ 正社員転換推進措置(パートタイム・有期雇用労働法第13条)……企業側が転換の機会

 や仕組みを用意する措置義務


・ 無期転換ルール(労働契約法第18条)……有期労働契約が通算5年を超えて更新された

 場合に、労働者の申込みによって無期労働契約に転換する仕組み


無期転換によって契約期間の定めはなくなりますが、それによって当然に正社員(通常の労働者)になるわけではありません。無期転換後の職務内容や労働条件をどう設計するかは、別途の検討課題になります。


あわせて、2024年4月からの労働条件明示ルールの改正により、有期契約で働く人に対しては、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、申込機会と無期転換後の労働条件を明示することが求められています。有期契約の管理全体を見直す機会として捉えるとよいでしょう。



6. 実務チェックリスト


自社の状況を確認する際の目安として、次の項目が参考になります。


□  自社の雇用区分のうち、短時間労働者・有期雇用労働者に該当する区分を

  把握しているか

□  パートタイム・有期雇用労働法第13条の①〜④のうち、

  どの措置を採用しているかを説明できる状態になっているか

□  正社員転換制度を就業規則または別規程に定めているか

□  転換の要件・選考方法・実施時期が文書で明確になっているか

□  正社員募集の情報が、非正規雇用で働く人にも届く経路になっているか

□  雇入れ時の説明資料に、転換推進措置の内容が含まれているか

□  直近数年の転換の申込・実施状況を記録として残しているか



7. 助成金の活用も検討材料に


正社員転換を実際に進める場合、キャリアアップ助成金(正社員化コース)などの活用を検討できる場合があります。支給要件や支給額、対象となる転換の内容は年度ごとに見直されることがあるため、実施前に最新の支給要領を確認したうえで、計画書の提出時期や就業規則の整備との前後関係を押さえておくことが大切です。



おわりに


若年層の人口が減少する中、正社員を中心とした事業運営では十分な人材確保が難しく、働く日数や時間に制約のある人材を活用する場面が増えている企業も多いかと思います。転換推進措置は、法令対応という側面にとどまらず、自社で経験を積んだ人材に社内でのキャリアの道筋を示す取り組みでもあります。

自社の制度が現在の実態に合っているか、この機会に点検してみてはいかがでしょうか。制度設計や就業規則の整備についてご不明な点がありましたら、当事務所までご相談ください。



【免責事項】

本記事は、掲載時点における法令・通達・公表資料等に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の企業や事案に対する具体的な助言を行うものではありません。

内容の正確性には十分留意しておりますが、その完全性・最新性を保証するものではなく、法令改正や行政解釈の変更等により記載内容が実際の取扱いと異なる場合があります。本記事の情報を利用されたことにより生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

実際のご判断・ご対応にあたっては、必ず最新の情報をご確認、社労士等の専門家にご相談ください

 
 
 

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